VERSION GUIDE 16
「The Sound of Silence」
アコースティック原版と
エレクトリック版は何が違う?
サイモン&ガーファンクルの「The Sound of Silence」には、アコースティックの原版と、そこに電気楽器を重ねた版があります。Apple Musicでは、曲名に何も付いていないものと、Acoustic VersionやElectric Versionと明記されたものが並びます。
今回比べるのは、この2種類です。1964年の『Wednesday Morning, 3 A.M.』と1966年の『Sounds of Silence』、さらに両方を版名付きで収録する『Old Friends』を入口に、どの録音に何が加わったのかを整理します。
- サイモン&ガーファンクル
- The Sound of Silence
- アコースティック
- リミックス
- ISRC
出発点は、1964年のアコースティック録音
公式ディスコグラフィは、1964年10月19日発売の『Wednesday Morning, 3 A.M.』に「The Sound of Silence」のアコースティック原版が収録されていると説明しています。現在のApple Music日本カタログでは、このアルバムの曲名は複数形の「The Sounds of Silence」です。公式アルバム解説
翌1965年には、この録音に伴奏を追加した版が登場します。その後、1966年1月17日発売のセカンドアルバム『Sounds of Silence』に収録されました。アルバムの発売年と、もとになった録音の年が異なる点に注目してください。公式の制作経緯紹介・セカンドアルバムの公式解説
ヒット版では、元の録音に伴奏を重ねている
アート・ガーファンクルは2012年のMusicRadarのインタビューで、自分たちがヨーロッパにいる間に、レコード会社側がエレクトリック・ベース、ドラム、12弦のエレクトリック・ギターを重ねたと振り返っています。本人へのインタビュー
この、すでにある録音を再生しながら追加の演奏を録る工程が「オーバーダブ」です。この曲では元の歌と演奏を土台に、新たな伴奏を加えた関係として2つの版を聴き比べられます。
| 工程 | 何を変えるか | 今回の比較との関係 |
|---|---|---|
| オーバーダブ | 既存の録音に新しい歌や演奏を重ねる | エレクトリック版では伴奏を追加している |
| リミックス | 録音素材の音量・定位・響きなどを組み直す | 追加した伴奏を含めた音のまとめ方も比較の観点になる |
| リマスター | 完成したミックスをもとに音質や音量などを調整する | 伴奏を追加した経緯とは別の工程 |
エレクトリック版の違いを「音質をよくした版」とだけ捉えると、演奏が加わった点を見落とします。聴き比べでは、二人の歌を追いながら、周囲の伴奏が変わると歌の受け取り方も変わるか、自分の耳で確かめてみましょう。
Apple Musicで選ぶ4つの入口
比較する音源の系統は2つです。最初の2行は各アルバムから選ぶ入口、後半の2行は同じ編集盤で版名を確認しながら選ぶ入口です。
| 比較する版 | 今回選ぶ収録先 | カタログの曲名 | 長さの目安 |
|---|---|---|---|
| アコースティック原版 | Wednesday Morning, 3 A.M. | The Sounds of Silence | 約3分9秒 |
| エレクトリック版 | Sounds of Silence | The Sound of Silence | 約3分10秒 |
| Acoustic Version表記の収録 | Old Friends | The Sound of Silence (Acoustic Version) | 約3分5秒 |
| Electric Version表記の収録 | Old Friends | The Sound of Silence (Electric Version) | 約3分5秒 |
Apple Musicで開く:
- 『Wednesday Morning, 3 A.M.』の原版
- 『Sounds of Silence』のエレクトリック版
- 『Old Friends』のAcoustic Version
- 『Old Friends』のElectric Version
表は2026年9月10日のApple Music日本カタログを確認し、時間を秒単位に丸めたものです。現在の配信が、発売当初の盤と完全に同じミックスやマスターであることまでは確認していません。
ほぼ同じ長さでも、伴奏の違いは見分けられない
表の最初の2曲は、カタログ上の長さの差が約0.7秒しかありません。『Old Friends』の2曲は、どちらも約3分5秒です。伴奏を重ねる変更は、必ずしも曲を長くするわけではありません。再生時間が近いことを理由に、同じ版として整理しないようにしましょう。
今回の原版と『Old Friends』のAcoustic Versionは、ISRCがともにUSSM16401419です。一方、『Sounds of Silence』の曲と『Old Friends』のElectric Versionは、ともにUSSM16401131でした。公式の収録情報や明示された版名と併せると、今回の4曲を2系統に分けて探す手掛かりになります。
ただし、同じISRCでも収録先によって長さに数秒の差があります。その理由が前後の余白、フェード、編集、配信マスターの違いのどれに当たるかは、今回のカタログ確認だけでは特定できません。同じ番号から、音質・ミックス・マスターまで同一と判断することはできません。
曲名の「s」や発売年だけで選ばない
『Wednesday Morning, 3 A.M.』ではThe Sounds of Silence、『Old Friends』のAcoustic VersionではThe Sound of Silenceと表記されています。どちらも今回のアコースティック側の入口なので、SoundかSoundsかだけでは版を区別できません。
同様に、『Old Friends』の発売年である1997年を、収録曲の再録音年と考えないようにしてください。今回の比較では、まずAcoustic Version/Electric Versionの表記を見て、元の収録アルバムと照合するのが分かりやすい選び方です。Apple Musicの『Old Friends』
聴き比べるなら、この順番で
- 最初にアコースティック原版を選ぶ。 『Wednesday Morning, 3 A.M.』のリンクから、二人の歌と伴奏の関係を確かめます。
- 『Sounds of Silence』の版へ切り替える。 同じ端末・出力機器で聞こえる音量を近づけ、歌の対応する箇所に伴奏がどう重なるかに注目します。
- 版名を見ながら選ぶなら『Old Friends』へ進む。 Acoustic/Electricを確かめ、先ほどの2曲と対応づけます。収録先による数秒の差を、直ちに別演奏の証拠とは扱わないようにします。
これらは制作資料から設けた聴き比べの観点です。筆者が実再生で確認した音の評価や、秒数を指定した聴感レビューではありません。
確認時、この曲URLからの検索には表の4曲が含まれました。検索結果では、今回確認したアーティスト・曲名・ISRCに一致する音源を「アコースティック原版」「エレクトリック版(追加演奏)」と表示します。両版は録音素材を共有していても同じ版としては扱いません。同じ版・ISRCで再生時間が近い別収録盤は高信頼度の候補になりますが、ミックスやマスターまで同一とは限らないため、表の収録盤と曲リンクも合わせて確認してください。