LISTENING GUIDE 01
リマスターと
リミックスの違い
どちらも「昔の曲が新しく出た」ように見えますが、主に手を加える工程が違います。その違いを知ると、Apple Musicで同じ曲が何種類も並ぶ理由と、聴き比べる面白さが見えてきます。
先に、ひとことで
- リマスター
- 完成したミックスを土台に、全体の音色、音量感、ダイナミクスなどを整え直して、新しいマスターを作る。
- リミックス
- 声や楽器などの素材へ戻り、各要素の音量、位置、音色、効果を組み直して、新しいミックスを作る。
実際の制作方法や表記は作品ごとに異なります。ここでは一般的な違いを説明します。
制作工程は、どこが違う?
録音された声や楽器は、まず「ミックス」という工程でひとつの音源へまとめられます。ボーカルをどれくらい前へ出すか、ギターを左右のどこへ置くか、どの帯域を強調するか、残響をどれくらい加えるか。こうした各要素の関係を組み立てたものがミックスです。
リミックスでは、一般にこの段階へ戻ります。同じ演奏の録音素材を使っていても、声や楽器のバランス、定位、エフェクトを変えることで印象が大きく変わることがあります。作品によっては別テイクへの差し替えや構成の変更も伴うため、リミックスという表記だけで演奏素材がすべて同じとは判断できません。
ミックスの次に、その音源を配信やCDなどへ届けるための最終調整を行うのが「マスタリング」です。リマスターでは、すでに存在する作品をあらためてマスタリングし、新しいマスターを作ります。通常は完成したミックスを土台にするため、個々の楽器の関係を組み直すリミックスとは出発点が異なります。
どう聴こえることがある?
リマスターでは、全体の明るさや低音の量、音量感、ノイズ、音の強弱などに違いを感じることがあります。元のミックスの特徴を保ちながら、現在の再生環境や配信形式に合わせて整えられることもあります。
リミックスでは、ボーカルが近く感じられる、今まで埋もれていた楽器が聞こえる、左右の配置が変わる、残響が増減するなど、要素同士の関係そのものが変わることがあります。ステレオからDolby Atmosのような空間オーディオへ組み直された場合も、単なる音質調整とは違う体験になります。
| 見るポイント | リマスター | リミックス |
|---|---|---|
| 主な出発点 | 完成済みのミックス | 声・楽器などの録音素材 |
| 変わりやすい部分 | 全体の音色、音量感、ダイナミクス | 各要素の音量、位置、音色、効果 |
| 聴くときの注目点 | 全体の質感、強弱、ノイズ、聴き疲れ | 声や楽器の距離、左右・奥行き、聞こえる要素 |
ただし、「新しい方が必ず高音質」「音が大きい方が優れている」とは限りません。好みや再生環境でも印象は変わります。違いは優劣ではなく、別の聴き方を選べる手掛かりです。
Apple Musicでは、何を見ればよい?
まず曲名やアルバム名にある Remastered 2011、2023 Mix、Remixなどの明示表記を見ます。年が書かれていれば、その版を作った時期を知る強い手掛かりになります。
一方、Apple Musicに表示される発売日が新しいことだけでは、新しいリマスターとは判断できません。新しいベスト盤に以前のマスターが再収録されることもあるためです。Dolby Atmos対応やApple Digital Masterの表示も、それだけでリマスター年や音源の新旧を示すものではありません。
キキナオシは、曲名・アルバム名の版表記や確認済みの制作情報をもとに分類し、発売日、ISRC、再生時間なども使って候補を整理します。ライブ、再録音、別テイクなどは、Remaster/Remix表記が併記されていても演奏の違いを優先する場合があります。また、Stereo Mix表記を「その他の別バージョン」として表示するなど、記事で説明する制作工程と画面上の分類名が一対一で対応しない場合もあります。Apple Music APIの公開されている曲属性には「この音源は何年のリマスター」「この2曲は同一マスター」と直接断定できる専用属性がないため、結果は必ず候補として表示します。
実際に聴き比べる4つのポイント
- 1. 音量を近づける大きい音は、それだけで迫力や明瞭さが増したように感じやすいため、できるだけ近い音量で比べます。
- 2. 同じ場所を聴く歌い出し、サビ、間奏など、同じ数十秒を行き来すると違いを見つけやすくなります。
- 3. 個別と全体を分ける声や楽器の位置が変わったのか、曲全体の明るさや強弱が変わったのかを分けて聴きます。
- 4. 一度で決めないイヤホンとスピーカー、小音量と通常音量など、環境を変えると別の良さに気づくことがあります。
好きな曲で、違いを探してみる
曲名を入力し、アーティスト名の候補から対象を選ぶと、Apple Musicで見つかったリマスター、リミックス、ライブなどを種類別に確認できます。
キキナオシで曲を検索する →参考資料と、このガイドの限界
- ミキシングとマスタリングの違い(iZotope) — 個別の録音素材と完成したミックスで、調整対象が異なること
- リマスタリングの工程(iZotope) — 既存作品への再マスタリングと、エンジニアへの取材
- Apple Digital Masters(Apple公式PDF)(外部サイト) — 配信用マスターの制作・確認工程
- Songs.Attributes(Apple Music API公式資料)(外部サイト) — 曲名、アルバム名、ISRC、発売日、audioVariantsなどの提供属性
本記事は一般的な制作工程と公開情報をもとにした解説です。個別作品の制作方法や、Apple Music上のすべての表記を保証するものではありません。キキナオシはApple公式サービスではなく、Apple MusicはApple Inc.の商標です。