VERSION GUIDE 20
サザンオールスターズ
「いとしのエリー」
シングル・アルバム・
2024リマスターは何が違う?
「いとしのエリー」を聴こうとすると、シングル、『10ナンバーズ・からっと』、『海のYeah!!』など、いくつもの収録が見つかります。さらに「2024 Remaster」と付いたものも。同じ曲なら、どれを選べばよいのでしょうか。
まず比べたいのは、『10ナンバーズ・からっと』のリマスター表記なしの配信と2024年版です。シングルに選ばれた制作背景をたどりながら、収録盤の違いと、音を仕上げ直すリマスターの違いを整理します。
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- 聴き比べ
1979年、シングルに選ばれたバラード
「いとしのエリー」は1979年3月25日に発売された、サザンオールスターズの3枚目のシングルです。同年4月5日のセカンドアルバム『10ナンバーズ・からっと』では、全10曲の最後に置かれています。公式シングル情報/公式アルバム情報
このバラードをシングルにするまでには、別の候補もありました。当時の録音を担当したエンジニア、猪俣彰三は、2018年のインタビューで「思い過ごしも恋のうち」と「いとしのエリー」のどちらを推すかで意見が分かれたと回想しています。猪俣自身は、録れたサウンドにも手応えを感じて「いとしのエリー」を推したそうです。FM COCOLO番組トーク/Billboard JAPAN
その経緯を知ると、シングルで1曲を聴く時間と、アルバムの最後にこの曲へたどり着く時間とで、受け取り方も変わりそうです。軽快な曲やにぎやかな曲も並ぶアルバムの流れを聴いてから、締めくくりのバラードへ。収録盤を選ぶ楽しみは、音そのものの違いだけには限りません。
2008年のCDと、2024年の配信リマスター
『10ナンバーズ・からっと』は、1979年に発売された後にも音の仕上げを見直した版が出ています。2008年12月3日には、サザンのオリジナルアルバム14作品がK2HDマスタリングによるリマスターCDとして再発されました。このアルバムのCD品番は「VICL-63302」です。2008年の公式活動記録/ビクター公式CD情報
さらに2024年11月27日、配信限定リマスター企画の第1弾として『10ナンバーズ・からっと』が登場しました。公式の説明では、発売当初のオリジナル・マスターに忠実な方向で、デジタルでの楽しみ方に適した音へ整えた企画とされています。2024年の公式活動記録/リマスター企画の公式解説
リマスターとは?
歌や楽器を組み合わせたミックス音源をもとに、音量や音色などを最終的に仕上げ直す工程です。歌・演奏を録り直す「再録音」や、個別の録音素材から音の組み合わせを作り直す「リミックス」とは工程が異なります。今回の2024年版は、公式にリマスターとして案内されています。
K2HDは2008年CDの資料にあるマスタリング方式の名称です。これを、そのまま2024年版にも使われた方式と考えることはできません。また、Apple Musicの「リマスター表記なし」の配信が、1979年当時や2008年CDと同じマスターかは、今回の資料では確認できませんでした。以下では、現行配信の表記なしと2024年版を比較します。
Apple Musicで見つかる5つの収録
比較の中心は表の最初の2行です。シングルに加え、『バラッド '77~'82』と『海のYeah!!』も掲載しました。バラード集ではDISC 1の最後、ベスト盤『海のYeah!!』ではDISC 1の2曲目に収録されています。バラッドの公式情報/海のYeah!!の公式情報
スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
| 比較の入口 | 収録盤 | 長さの目安 | Apple Music |
|---|---|---|---|
| アルバム収録 | 10ナンバーズ・からっと(表記なし) | 約4分25秒 | 表記なしを聴く |
| 2024リマスター | 10ナンバーズ・からっと [2024 Remaster] | 約4分25秒 | 2024年版を聴く |
| シングル収録 | いとしのエリー - Single | 約4分26秒 | シングルを聴く |
| バラード集 | バラッド '77~'82 | 約4分25秒 | バラッドを聴く |
| ベスト盤 | 海のYeah!! | 約4分25秒 | 海のYeah!!を聴く |
長さは2026年9月15日に確認した日本カタログの値を秒単位に四捨五入しています。配信状況やカタログ情報は変更されることがあります。5収録があることは、5種類の別演奏や別ミックスがあることを意味しません。
同じISRCと、約1.6秒以内の時間差
ISRCは、録音を識別するためのコードです。今回の5収録には、すべて「JPVI07904140」が付いていました。同じ録音として整理されていることの手掛かりになりますが、音量や音色を仕上げるマスターまで完全に同じとは限りません。リマスターでも同じコードを使うことがあります。
カタログ上で最も長いシングルは266.067秒、最も短い『海のYeah!!』は264.500秒で、差は約1.57秒でした。比較の中心となるアルバム表記なしは264.887秒、2024年版は264.800秒で、こちらの差は0.087秒です。
この小さな差だけでは、無音部分やフェードの長さが違うのか、ほかの編集によるのかまでは分かりません。曲末を聴く手掛かりにはなりますが、「シングルだけ別ミックス」「ベスト盤では歌が短くなった」といった結論は出せません。
今回確認した音源形式は、5収録ともLosslessに対応していました。Lossless(ロスレス)は、音声データを失わない圧縮方式を指すもので、どの年のマスターを使ったかを示す表示ではありません。「Losslessだから2024年版」「同じISRCだから音まで同じ」と結び付けず、それぞれの情報を分けて見ましょう。
2024リマスターでも、発売日は1979年?
2024年版の曲名とアルバム名には「2024 Remaster」と付いていますが、カタログ上の日付はどちらも「1979年4月5日」でした。これは作品の元の発売日と、リマスター版が配信された日が別の情報だからです。1979年という日付だけを見て、2024年版ではないと判断しないでください。
『海のYeah!!』でも、曲に設定された日付は1979年3月25日、収録アルバムは1998年6月25日でした。アルバムが後から発売されたことだけで、そこで曲を録り直したり、新しくリマスターしたりしたとは判断できません。
探すときは、まず曲名・アルバム名の版表記を確認し、収録盤と日付を合わせて見ます。この曲なら「2024 Remaster」が、今回確認できた配信リマスターを選ぶ目印です。
聴き比べるなら、アルバムの2収録から
- 表記なしと2024リマスターで、同じ箇所を聴く。 同じ端末・イヤホンやスピーカーを使い、歌の同じフレーズを目印に切り替えます。音量をできるだけ近づけてから、声と伴奏の聞こえ方や余韻に耳を向けてみてください。
- 普段聴くシングルやベスト盤へ戻る。 慣れた収録と比べると、自分にとって聴きやすいものを選びやすくなります。曲末まで聴ける場合は、音楽が消えてからトラックが終わるまでにも注目しましょう。
- アルバムの流れの中でも聴く。 『10ナンバーズ・からっと』の前の曲から続けて再生し、最後の「いとしのエリー」へ。音の差がはっきり分からなくても、収録順をたどることで、同じ曲の別の楽しみ方が見つかります。
音量が大きいほうを良い音と感じることもあります。イコライザなどの再生設定もそろえ、差の大きさより、自分がどの収録を楽しめるかを確かめてください。短い試聴では曲末まで含まれない場合があります。
この記事で確認した範囲:公式資料、制作当事者の証言、日本カタログと検索結果に基づく比較ガイドです。現行配信の実聴取による音質評価、ミックスやマスターの完全一致の検証は行っていません。2024年版の具体的な処理設定や、約1.57秒の差の原因も未確認です。
表記なしのアルバム収録を基準に、5つの収録を探す
「いとしのエリー」を聴き比べる →確認時のキキナオシ検索では5収録が残り、2024年版は「2024 リマスター」として分類されました。同じISRCと近い再生時間から高信頼度になりますが、これは音質の評価や、マスターの完全一致を保証する表示ではありません。